犬の胃捻転について 
 私は20年余りの間にジャーマン・シェパード3匹、ボーダーコリー1匹で8回の胃捻転を経験しています。そのうち胃捻転が直接の死因になったのは2匹です。ありとあらゆる情報を集め予防策を講じてきましたが、残念ながら決定的なものは見つかっていません。また、胃捻転になりやすいとされているジャーマン・シェパードが主ですから、私の胃捻転に対する考え方や取り組みが、すべての犬種に対して信憑性が欠けいるかもしれません。しかし、現実の発症例として頻繁ではありませんがほとんどの犬種に起こっています。よって総合的な犬の病変だと捉えてもいいかと思いますし、発症の可能性は低くても対策は必要だと思います。「知っているか知らないか」で犬の生存率が大きく変わるのは言うまでもありません。
 私は、予防に対しての取り組み、発症後のケア並びに再発防止など、総合的な対処を施すことが重要であることに確信を持っています。そして多くの人と情報を共有し、あらゆる意味でその犬と飼い主さんを、胃捻転の恐怖に立ち向かえるようにしたいと考えています。
シェパードのモネさん、2007年。
13歳で胃捻転の手術。
手術後4日で退院、その日に自宅にて。
切開個所保護のためTシャツ着用しています。
 
 胃捻転が起こるメカニズム  解明されていないので推測の範疇になります。よって「であろう」あるいは「考えられる」などの表現が主になります。
 体内での胃の形状が大きく関係していると考えています。犬の胃は人とは違いハンモックのように靭帯で前後に引っ張っている状態です。人はどちらかというと上下に引っ張っています。ぶら下がっている状態とも言えますが、そもそも胃は食物を消化するために自由に動ける余裕が必要です。
 ハンモックを安全に使うためには柱と繋がっているところの強度と、腰かけた時の重量バランス、そして風などの外部的要因がない事が重要です。同じことが犬の胃にも当てはまります。何らしかの原因により緩んだ靭帯、そこに食物という重量物が入ります。食物が入れば胃は消化しようとして自ら動きます。そこへ振動などの外部的要因が加わり、バランスを崩し「コロン」とひっくり返ります。
 これが胃捻転です。
 まれですが、一度ひっくり返った胃が逆にひっくり返って元に戻ることもあります。
多く語られている予防策や原因を当てはめ、なおかつ自身の経験と治療の経緯(自身の犬の胃捻転の開腹手術に終始立ち会ったことがある)、経験豊富な獣医師の話を総合すると、このような推測が成り立ちました。
 胃捻転発症の経緯  ※胃捻転の前段階であると言われている胃拡張はすぐさま嘔吐しようとするが、
胃捻転においては嘔吐しようとする前に特異な症状がある。また、すべての胃拡張が胃捻転に進行するとは限らず、むしろ別の症状であると考えたほうがいいかもしれない。

①一切の前触れはない、一瞬で発症し、それまでは普通に元気である。
②立ったまま、あるいは座ったりなど動作が止まり明らかに普通ではない表情になる。
③胃は急激には膨らまない。
④座ったり、伏せた状態(横にはならない)で「ムっ」とした表情が続く。
⑤頭を下げて「うろうろ」する。まだそれほど苦しそうにしないが、ここで吐こうとするけど吐けない。発症後30分経過。
⑥徐々に胃が膨らみおなかの変形する。
⑦胃は硬くパンパンに膨れ、激しく苦しみだす。
⑧泡状の唾液を無理やり吐く。発症後1時間。
⑨ねじれた部分が壊死しだし毒素が体内に回る。発症後2時間~3時間経過。
⑩意識障害を起こし横に倒れる。多臓器不全に陥り死に至らしめる。発症後6時間~8時間。
 直接の死因とその状態  ⑨の状態で手遅れになります。つまり直接の死因は壊死したところから発生する 毒素による多臓器不全です。胃がねじれると前部は食道、後部は十二指腸との接合部分が塞がれます。すると胃の中で発生しているガスが行き場を失います。これによって胃が膨れ上がります。胃が限界まで膨れると先の接合部分を圧迫します。これによって接合部分の血流が完全に停止します。そして組織が壊死し毒素を発生させます。
 胃捻転の手術の際に、開腹する前に胃に穴をあけてガスを抜く処置をするのは緊急的にその壊死を防ぐためです。開腹する前の麻酔などの準備中に毒素が回ってしまうと術後の回復に支障が出てきます。
 胃捻転を発症する原因的要素     ①靭帯の緩み
 加齢によって胃を吊っている靭帯が緩むと言われています。それは胃がほとんど動きっぱなしの臓器だからです。現在の犬の飼い方の常識では胃に食物が入っている時間が長く、胃を休めることが難しくなっているのではないでしょうか。
一概に発症年齢を決めることはできませんが、3歳以上で緩みだし、8歳では危険年齢になると考えていいでしょう。それ以降は当然危険度は増していきます。
 また、他の病気や去勢、避妊手術などで開腹手術をした場合、直接この靭帯を触ったりしませんが、緩んでいる場合があります。
 ②腹部の空洞
胃捻転の発症には明らかに犬種の偏りがあります。
シェパード、ドーベルマン、スタンダードプードル、グレイハウンド、などです。
そしてこれらの犬種に共通しているのは胸板の深さです。
腹部に空洞があるわけではないですが、胃がひっくり返りやすい余裕があるのは確かです。
また、①の中の開腹手術の影響も考えられます。
特に脾臓を摘出した犬に胃捻転の発症例が多くみられます。
 ③食事
 一度に早くたくさん食べる犬に発症が多いと言われるのは、消化速度が遅くなることと、その量に伴い重量物が胃の中に長く滞在するからです。消化が良いものに越したことはないですが、食材の種類はあまり関係がありません。関係が深いのは量も勘案した時の総重量です。よって、胃捻転予防に消化のいいものをという判断から、ドライフードを過剰にふやかして与えるのは逆効果です。それは一度に胃の中に入る重量が増えるからです。
 また、そういった意味からも水分の過剰摂取も危険です。確かに水分は一般食物より胃に留まっている時間は短いですが、大量摂取時の総重量は一般食物と変わりません。
 誤飲はもとより、牛皮を加工した嗜好品の類も一考を要します。嵩が高いうえに吸水性があり胃液と相まって重量物化します。牛のヒズメ、豚の耳なるもので胃捻転を発症した例があります。
 ④外部的要因
 食後の運動が胃捻転発症に深くかかわっていることは事実です。それは運動が外部的要因として作用するからです。食物が胃の中にあるとき、それを消化させようとするエネルギーが働き、胃を活発に動かします。この状態で運動的なことをするとそのことによって、自ら活発にさせた胃の働きと重なります。重なった胃の動きのほうを止めればいいのですが、そこは副交感神経の働きですから簡単に止まったりはしません。少し動きが鈍くなる程度です。
 運動により胃が揺れ動き、そこへ胃本来の動きが重なり勢いが増してひっくり返ってしまいます。
 ハンモックの上に乗っているとき、姿勢を変えようと動いたときに、誰かにハンモックを揺らされたらどうなりますか?という話です。
 ここで言うところの運動とは胃を揺らしてしまう運動ということです。ですから、車に載せての移動も含まれます。また狭いケージの中での無理のある窮屈な方向転換も胃を揺らすことになります。
 胃捻転の発症例として犬が興奮状態にあるときなども言われますが、これも精神的なことより、興奮によって引き出される動作が原因だと考えられます。概ね興奮状態の犬は飛び跳ねたり、力んだりと平静状態とは違う動作をするものです。
 胃捻転はこの4つの要因が微妙に重なって発症します。よってどれか一つでも重ならないようにすることが予防対策になります。
 胃捻転を発症させないために      ※予防対策が完璧でないことをご了承ください。
 そして現在ある方法が有効な予防策として認知されつつあります。それは胃捻転を起こす前に開腹手術をし胃を固定してしまう手術を受けることです。固定するとはひっくり返らないように何か所かを肋骨などに縫合することです。以前は肋骨に縫合するのが一般的だったようですが、現在はもっと理想的な場所(専門用語はわかりませんが、腹の内膜にある筋と聞いています)が主流のようです。というのも、縫合したから完全に予防できるわけではないからです。むしろ縫合した後に胃捻転を起こした場合、縫合箇所の破損も含めて重症化するケースがあるからです。肋骨が骨折していたケースもありました。
 このようなことから胃捻転の手術の際に胃を固定する処置をする獣医師と、固定しない獣医師とがいます。獣医師会の推奨があるのかそのあたりはわかりませんが、それぞれの獣医師の経験による判断が影響しているのでしょう。
 一度、胃捻転を発症したら胃を吊り下げている靭帯は確実に緩みます。ということは、再発の頻度も高くなるということになります。予防対策は再発の予防も大きな課題になっています。
 さて、この再発ではない発症前の固定手術についてですが、これの良し悪しの判断は難しいところでしょう。一生涯胃捻転にならない犬もたくさんいます、というかほとんどです。発症しやすい犬種にあっても発症率が高いわけではないのです。事前の胃の固定は確かに胃捻転は防げるかもしれません、しかし正常な胃の機能を阻害することは確かです。それにおそらくどのような影響が出るかのデータの蓄積にはまだ至っていないはずです。
 ①靭帯を鍛える
 強い靭帯を作る、これが可能かどうかはわかりません。しかし、犬としての正常な体作りは骨格や筋肉だけではなく、内臓やそれに携わる部分にも影響が出るはずです。よってスポーツドッグのような鍛え方ではなくても、犬として普通に楽に運動できるような身体は必要です。肥満気味の運動不足は靭帯にもよくないはずです。
 ②腹部の空洞をなくす
 病気や怪我による、しなければならない手術には選択の余地はありません。胸板の厚い犬種についてはブリーディングのことを根本的に考え直さないとならない問題です。残った道は胃捻転になりにくい犬種を選ぶことです。この考え方は大幅にリスクを減らします。特に雑種には発症例が少ないことを考え合わせると、胃捻転には遺伝的要素が影響していると考えられます。
 ③食事の与え方
 食事と水分、何も胃の中になければ胃捻転はほぼ起こしません。(ただし、健康な胃の場合に限ります)と言ってそれらを省くことは不可能です。生きていくうえである程度の水分と栄養、そしてカロリーは絶対に必要です。問題はその量と重量ですから、栄養価の高いカロリーを満たした自然含水比の高い食事を少量にします。質量が少なければおのずと重量が軽くなります。自然含水比の高い食事とは、食事とは別に摂取する水分を制限するためです。
 量が少ないと消化が早くなるので胃を空っぽにできる時間も早く来ます。一日の量を回数を分けて1回を少なくする方法もありますが、それでも3回が限度です。胃の中の食物が完全に胃から通過して無くなるのに、健康な胃の場合で2~3時間と言われています。よって分ける回数が多いと常に胃の中に食物が入っていることになります。重量は消化するごとに軽くなっていきますが、胃を動かすエネルギーは使い続けるので、胃を休ませることが出来なくなります。
 こういった意味では食事の合間の「おやつ」も決していいとは言えません。ましてやそこそこの量であったならば重量も関係してきますからなおさらです。
 問題は犬の空腹感ですが、いくら少量と言ったところで、スプーン1杯にはなりません。ある程度の食べた感は得られるはずです。ただ、満腹感には程遠いものになります。最も、犬の満腹感を満たそうとするととんでもない量になりますし、それは確実に肥満と胃腸障害につながります。
 むしろ問題なのは「食事を減らしている」という飼い主さんの自責の念ですが、この食事の与え方は胃捻転の予防という観点だけではなく、より健康的な犬に育てるためと考えを切り替え、打ち勝っていただきましょう。一度、胃捻転の恐怖を体験するとこれぐらいは簡単に対処できます。
 水分についてはことさら多く与える必要もありませんが、極端に制限することもないでしょう。犬たちがいつでも飲めるような状態だと、必要な時に必要な分だけ自ら摂取します。そして多くの場合それは食事の合間であって胃への負担が軽くなる時です。食後すぐに味のついた水分を大量に与えるのは避けましょう。これは明らかに加重量になりますし、すでに胃に入っている食物に含まれて、長く胃中に留まってしまいます。また、大量の水を一気に飲む傾向のある犬は水の摂取を制限します。ただこれらの犬たちは何らしかの胃腸障害を持っていることが多いので、そこの治療を進めれば改善されると思います。
 スポーツドッグの運動、体調管理の観点から、高温時期や運動前は大量の水分摂取を薦めていますが、胃捻転の予防を考えたとき、そのことは全く当てはまりませんので、当事者の方が犬の年齢、その時の環境、スポーツの種類、本人のこだわり等を考えて折り合いをつけましょう。
 ⑤外部的要因をなくす
 食後の安静。食後の安静とは動かさない、あるいは寝かせる、と言ったことではありません。心身ともにリラックスできる状態のことです。これは主に習慣化された場所と環境で自由に過ごすことになります。外出先で胃捻転を発症するケースではこの部分が外部的要因になっていることがあります。
◎安静時間は最低2~3時間です。この時間内でほぼ摂取した食物は胃を通過します。ただし胃腸が健康な状態である場合です。数日前から草をよく食べる、ゲップが出る、嘔吐する、下痢をするといった症状がある場合は注意が必要です。さらにそれらの症状を優先して改善されますことを薦めます。
◎運動はすべて厳禁です。軽く歩くだけの散歩もしないほうがいいですし、家のリビングで遊ぶのもよくありません。階段の上り下りもなるべくさせないようにしましょう。スポーツドッグのような激しいトレーニングは健康な胃の場合で6時間経過以降が安全です。
◎食後あるいは一日を通してケージの中で過ごさせる場合は、なるべく広いケージを用意します。床面積は横になった時に50%残っている広さで、高さは頭を持ち上げられるぐらいです。そして可能であればドアをオープンにしておくといいでしょう。ドアをオープンにしておくとケージから出ようとする犬は、本来そのケージの中ではリラックスできていないと考えて間違いありません。
◎自動車に乗せるのも2~3時間後が理想です。自動車が走行中の前後左右上下すべての揺れで犬の胃の運動機能は停止します。また、停車時のアイドリング振動も胃の運動を止めてしまいます。この状態は胃捻転の予防の以前に胃腸障害の原因にもなります。
◎家の中でリラックスしているときに、インターフォンのチャイム、来客、外の物音などに対して興奮状態が高くなるタイプの犬たちも食後の2~3時間は注意が必要です。現実的にそれらを排除することは難しいですし、そのよなことが癖として定着してしまった犬たちを是正させることも難しいです。できることと言えば捕まえて寄り添い落ちつかせるぐらいですが、それでも予防効果は高くなります。
 胃捻転が本当に恐ろしい理由  無処置で死亡率100%ですが、その処置はおよそ2時間以内にしなければなりません。処置とは開腹手術のことです。ここがこの病気の一番恐ろしいところです。
助かる道が時間内の手術しかないということは、手術してくれる動物病院が開業していなければなりません。しかも、そこへ発症してから2時間以内に行く必要があるのです。この二つの条件が調わないと、そうとうな時間、苦しみながら死にいく犬を見続けることになります。
 もし、夜の9時に発症してかかりつけの獣医さんが閉まっていたら、その獣医さんが休診の日に発症したら、犬とともに土地勘のない遠い所へ出かけて、そこで発症することもあるでしょう。あるいは朝食の後に仕事に行き犬だけで留守番のときに発症することもあります。
 24時間開院している救急動物病院が2時間以内に行ける場所にあります、だけど移動する手段がなかったら。車はあるけど免許がなかったら、もしその時にお酒を飲んでいたら。残念ながら犬には救急車は来ません。大きな犬はタクシーにも乗せられません。そもそも夜間診療所も少ないです。
 さらに信じられないでしょうが、胃捻転を診断できない、あるいは診断できても手術できない獣医院もあります。
 翌朝まで待つ余裕はありません。この現実を考えて、犬と生活することはとても大きな負担です。「なったら、なったでしょうがない」って思ってもいいでしょう。だけど、それでもできるだけのことはするべきでしょうし、何時間も要して苦しみながら絶命していく犬たちを、ただ見守るだけなどということは普通ではできないものです。
 事前準備  胃捻転にならなければそれが一番いいです、でも、もしもの時のために、知識と事前準備は必要です。災害救急袋と一緒です。「備えあれば患いなし」です。
 時間との勝負なので、まずは胃捻転について理解しておきましょう。そして深刻にとらえるようにすることが肝心です。防災と一緒です。防災意識を持っているかどうかが大切です。
 次に手術が可能な動物病院をリストアップしておきます。場所、連絡先、診察日と診察時間、時間外救急診察の有無。このリストアップは出先においても同じことです。旅行に連れていくのならその行先と道中が対象になります。そしてリストアップできないところへは連れて行かないか、あるいは行かないかの決断が必要です。
もし犬をどこかに誰かに預けるとしても、そこに同じように理解が必要ですから、
それを確かめてから犬を預けましょう。
 万が一の時に備えて手術費用も現金で用意しておきます。クレジットが使えない時もありますし、救急病院では現金での先払いを求められることもあります。
 搬送手段にも予備を手配しておきましょう。小型犬ならタクシー会社の連絡先を、もちろん夜間対応も含めてです。タクシーを使えない犬種なら友人などに頼むしか方法はないでしょう。最近ペットタクシーなるものがありますが、まだまだ普及していませんし、夜間対応は難しいと思われます。
 胃捻転を発症したら  リストアップの中から適切な医院を選びます。一番いいのは普段から通っていてなじみのある病院がベストです。必ず、事前に電話して、「胃捻転である」事を伝えましょう。そして何時ぐらいに発症したかと、病院へ到着するのが何時になるかを伝えます。このときに「胃捻転のことは知っているので手術の準備をお願いします」と言います。そうすれば緊急性が伝わりますし、その準備が病院側でできます。診察も早くなりますし、手術のための人員も確保できます。胃捻転に理解のある獣医さんならいやな顔はしません。もし、そんなことに聞く耳持たずと言った態度や「とりあえず診察に来てください」とあしらわれたら、そこの病院へは行くべきではありません。電話をしたときはほとんどが受付の係りの人が出ますが、優れた病院とはその受付の段階で適切な対応をしてくれるものです。あるいはドクターに電話を代わってくれるはずです。出先で病院を探すときはこのリスクがありますが、なじみのある病院では早い対応をしてくれます。
 これはとっても聞きにくいことですが、その病院に初めて行かなければならないとしたら、電話した時点で「緊急に胃捻転の手術ができますか」と尋ねるべきです。それは手術をしたくない人もできない人もいるからです。時間との勝負なので多少の無礼講は許されましょう。
 あなたが見立てを間違っても問題ありません。胃捻転でなかったらそれに越したことはないからです。そのことで獣医さんに気を使う必要もありません。ほとんどの獣医さんは胃捻転でなかったことに安堵してくれるはずです。それよりも躊躇して手遅れになるほうが深刻なのです。
胃捻転はなぜ研究されないのか。(ここからは以前に掲載した文、そのままです)

胃捻転はあまり研究されていません、と言うのも、言いにくい話ですがその病気が人間にはないからです。犬だけではなく馬とかにもあるようですが、とにかく人には無い、と言うことが重要課題から外れています。けっして獣医さんを非難しているわけではありません。ここはご理解ください。
 もう一点は実は重病の範疇に入らないぎりぎりにあるからです。確かに何の処置もしなければ絶命率100%です。
しかしそれは処置するまでの時間との勝負であって、治療(手術)自体は極めて難しいものではなく、犬自身の負担も少ないのです。事実、ウチのシェパード、8歳の時の胃捻転でも翌日に退院、3日後には普通に生活、1週間で走ってました。ここも言い方悪いですが、避妊手術と一緒ぐらいではないでしょうか、もちろん、時間が経過した重篤の胃捻転はそれほど簡単ではないですが、考え方として、なったら手術で完治しますから、と言うふうになります。だから原因や予防方法を突き止めるには至っていないのです。

間違いなく胃捻転は恐ろしい病気です、だけどそれは処置するまでの時間が怖いだけです。夜中とか休日とか出先とか言うのは、こっちの都合で犬の医療行為とは少し違う話しですね。

遺伝的なこともあると考えられています。それは明らかに発症する犬種に偏りがあるからです。シェパード、ドーベル、スタンプー、ラブ、グレイハウンド・・・・など。
以前、警察犬のブリーダーさんと話したことがあります。胃捻転をおこしてないシェパードの血統を作ると言うのは可能ですか?と。答えは「もちろん」です。しかし、シェパードの血統を守る理由はその卓越した能力を維持すること、
だから、胃捻転をおこさないブリードによって、その能力に不安が残るなら、そのブリードはシェパードとしては意味をなさない、と言うことでした。さらに、人のこざかしい知恵である犬のブリードは、やはりどこかにひずみが出る、だからなにを選ぶかを決めなければならない、と。こう言った考え方はもう時代にそぐわないかもしれません。しかし、我々が求めているのも事実なんです、シェパードはシェパードらしく、ボーダーコリーはボーダーコリーらしく、それに伴うリスクは背負わなければなりません。

まだあります。これがとても重要なんですが、胃捻転に限らず、犬たちはほとんどが健康で病気知らずです。重篤な病はめったにありません。癌や感染症でも全体の犬の数から言えば、ほんの少しです。病気になった犬を持ってしまった方には申し訳ありませんが、運が悪かった、と言うほかありません。命を落とすような病気に頻繁になるとしたら、犬は犬でなく、我々と共生するような動物にはなっていません。

ですから、今胃捻転は怖いよ、って脅かしていますが、あなたの犬がすぐにでもなると言うことはないです。めったになりませんから、それほど気を重くすることはないです。とくに上記に上げた犬種以外は、事実として発症例は少ないです。ありますよ、ボーダーもコーギーも。だけど、今の安定した生活を犠牲にしてまでそれに備えることはないです。ただし、胃捻転は事故としてとらえられる部分があるので、そこはしっかりとした予防策は考えたいです。予防策で100%有効と言うことではありませんが、リスクを減らすのはどんなことにせよ、正しい犬の飼い方ではないでしょうか。
 
 以前からいただいていた質問を掲載します。

大会参加時に犬の朝食を抜くことと胃捻転についてQ&A


Q大会場所に到着してから犬に朝食を与えてはいけませんか?
A犬が活動するまでに十分な時間が取れないことと、リラックスした環境下で過ごせないので与えないほうがいいです。

Q朝食を与えないことでスタミナや体調に影響が出ないのでしょうか?

A摂取した食物の栄養が犬の体内に行き渡り完全にエネルギーとなるのに、食物を摂取してから15時間と言われています。
よって今日、動くために必要な栄養は昨晩の食事が賄っていることになるので影響はありません。

Q朝食を食べられないことによる精神的なダメージはありますか。
A車に乗ってどこかへ行くことが大好きならばダメージはありません。
同じように外で遊ぶことにも積極的ならば問題ありませんし、空腹感に行動を支配されることもないでしょ。

Q朝食を与えないことに罪悪感を覚えるのですが?
A朝食を与え、車に乗せ、大会で走って万が一胃捻転を発症したら罪悪感どころではないですね。
命を守る安全性を優先しましょう、朝飯1回抜いても死にはしませんから。
それに下痢をしているときは「飯抜き」が特効薬なのは犬も人も同じです。
大会が終わったら帰路に就く前に会場で食事を与える方もいます。それはかつて頑張ったご褒美として与えれば、
大会会場にいい印象を持つから、という説があったからです。
これはあながち間違いではありませんが安全性を犠牲にするほどの効果はありません。家に帰ってからゆっくりと与えればいいと思います。
もし、家に帰るのが夜中になるとしたら、夜も抜いて翌朝に与えればいいでしょう。

Q水分の補給についてはどうでしょうか?
A水分は薄味のものについては胃に留まる時間が短いので(20分ほどと言われています)与えるべきです。
1回を少量にし、数回に分けて必要な量を目安で与えます。また、活動する30分前と帰宅するために車に乗せる30分前には与えません。
ドライフードを溶かしたようなペースト状の水分は普通の食物と同じだと考えてください。
出し汁程度なら水分ととらえることができますが、脂質の多いものはよくありません。

Qそれだと暑い時期に脱水を起こしませんか?
A可能性はあります。しかし、事前(前日)にしっかりと水分を取らせることで予防できます。
今、脱水症状に陥っているとするならば水分摂取を優先しましょう。体を冷やすということにおいても効果的です。
ただし、重症化している場合は水分を飲むこともできない場合が多いので、水に浸けるなど他の方法で体を冷やす必要があるでしょう。
暑い時期に脱水を予防するために適度な水分摂取は必要ですが、
通常の水分摂取で脱水になる可能性が高くなる環境下に犬を置かないことも重要です。

Q動かす予定のない同居犬には食事を与えてもいいでしょうか?
A多くの人と犬が集まる場所はどんな犬にもストレスになります。よってあまり好ましくありません。

Q胃捻転を発症したらすぐにわかりますか?
A普段から犬とのコミュニケーションがちゃんとしていればすぐにわかります。

Qボーダーコリーは胃捻転を起こしやすい犬種でしょうか?
A遺伝的要素からは起こしやすい犬種とは考えられていません。しかし、ここ数年ボーダーコリーの発症例が多くなっています。
それは一つには単純にボーダーコリーが増えていることです。全体数が多くなれば必然的に発症例も増えます。
もう一点はアウトドアにおける活動的な飼われ方をしていることが多いためです。
これは胃捻転を発症する原因要素の中の外部的要因が多いからです。
ボーダーコリーは胃捻転を起こしにくいが皆無ではない、よって油断しないように、ということになります。

Qもしも大会や講習会の会場で胃捻転を発症してしまったらどうすればいいでしょうか?
Aまずは主催者に報告して他の人の協力をお願いしましょう。
どこの場所であろうと必ず近くに住んでおられる方がいるはずですから、
その方から動物病院の情報を教えてもらいましょう。病院に一声かけてもらえたならなお結構です。
また、他に犬を連れてきている場合などは、その犬の面倒を頼まななければなりませんし、
荷物の撤収もお願いしなければならないかもしれません。時間との勝負であることを念頭に置いて行動しましょう。

Q胃捻転は再発すると言われていますが?
A確かに再発率は高いです。しかし現在の縫合処置なら相当な確率で再発を防げると言われています。
ただ、縫合がその後の犬の体調に与える影響についてははっきりとしたデータがまだありません。

Q胃捻転になったらどうしよかと不安でたまりません、どのように考えればいいでしょうか?
A胃捻転は発症しやすい犬種であっても頻繁に発症するわけではありません。
それに発症後の経過時間が問題であって、処置は難しくなく、手術の成功率は高いです。
つまり、必ず完治するということです。そして再発に関しては手術の時の縫合固定で大方防ぐことが出来ます。
従って知識も含めた備えをしっかりとしておくと十分に対処できると考えてください。
胃捻転に限らずですが、犬の病気についてあまりにも用心しすぎると、
犬の楽しみをどんどん奪ってしまう結果になって、そのうち犬との生活に疲れ果ててしまいます。
交通事故の不安から車の運転を辞めてしまったら、当然それに伴って関連する楽しみや生き甲斐がなくなります。
それよりも高いテクニックと油断しない自分に自信をつけたほうがいいのではないでしょうか。
「なったらなったでしょうがない、でも必ず助けてやる、それぐらいの準備はしているから」
と考えてください。